タイガース優勝の立役者となったのは、同じ高卒同期入団の井川慶。20勝5敗という驚異的な成績で賞を総なめにする、文字どおり大車輪の活躍だった。球界を代表する投手に成長した同級生の華々しい活躍を祝福する一方で、延々とシイタケの石突きを切り落としたり、メロンの種を搔き出したりという地道な作業を繰り返す自分がいた。熱烈なタイガースファンの調理場の上司は僕が元阪神の選手とは気づかぬまま、甲子園へ試合観戦に行った自慢話やタイガースについて熱く語ってくる。僕は話を合わせて相槌を打ちながら、自分の境遇と井川や元チームメイトたちの境遇とを比較して、嫉妬している自分がいることに気づいてしまう。そんな自分に苛立ち、どんどん嫌いになっていった。ほんの少し前までは同じユニフォームを着ていたのに。「俺はいったい何をやっているんだろう」。自分だけが取り残されたような焦燥感、将来に対する不安はますます大きくなっていった。そんなある日、仕事から帰るとテーブルに1冊の本がおいてあった。ありとあらゆる資格が掲載された資格ガイドだった。

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