2013年の春、加藤は東京・霞ヶ関の経産省を訪れた。開発を次のステップに進める資金調達を受けるためだ。自信はあった。だが応対に出た課長はこう言った。「介護・福祉のロボットなら補助の枠があるんだが、君たちのようなタイプには枠がないんだよ」介護ロボットのように足元の市場はないが、10年先に必ず必要になる技術だ。そう言って加藤が食い下がると、課長はボソッとつぶやいた。「そんなにやりたいんなら、アメリカでやればいい・・・」帰り道、加藤は怒りが収まらなかった。「俺たちは日本がアメリカに負けないように、退路を断ってベンチャーをやっている。それをアメリカでやれだと。官僚のくせに何を言ってるんだ」。次の週、いちるの望みを託して東京・丸の内の革新機構を訪ねた。応対に出た専務執行役員は不機嫌だった。「言っておくが、我々は民間のファンドだ。リターンを出さなくちゃならない。ヒト型ロボットに出す金はない」最初から取り付く島がなく、専務の説教は1時間に及んだ。「本省(経産省)は、ちゃんとロボット産業のフィジビリティースタディーをやっている。ヒト型には市場性がないというリポートもある」シャフトが開発を継続するために頼んだ出資額は3億円である。だが2兆円の投資枠を持つ革新機構は歯牙にもかけなかった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA