富裕層は富裕層なりに相続税対策を必死になって考えている。東証一部上場会社のオーナー経営者は、自身の保有する自社株の評価が数百億円に達しているのも、けっして珍しくない。彼らのほとんどが、全財産のうち自社株が占める比率は90%以上である。1000億円の遺産だとしても900億は自社株である。自宅を含め預金等は100億円以下である。しからば、どうやって55%の相続税を払うのだろう。もっとも簡単なのは自社株を売却して払う。しかし、それではオーナー経営者は一代で終わる。

それで皆、悩む。さすれば昔、武富士が1500億円の自社株を香港に住む息子に贈与した件があり、それが成功したが、その教訓を生かしてその後、国は法改正をし、贈与する側も、贈与を受ける側も、日本を脱出して5年以上にならないと日本の税がかかることになった。しかし、事業承継に関して驚くべきことに、その5年をクリアすべく日本を脱出する親子が引きも切らない。そこで、2年前に「出国税」なるものを設けて、日本を脱出する者は、出国時に、保有する株を、その時、時価で売却したとして、株式譲渡税を払ってから出て行け、ということになった。それでも脱出者は止まらない。そこで本年、5年基準を改正し、10年基準にした。つまり、日本の相続税・贈与税が課せられないのは、親子とも、日本を脱出して10年以上の条件になったのである。それでも税金のために脱出する人はいるのか、私にはわからない。

しかし、日本の経済を支え、多額の税金を払い、多くの人を雇用した人たちが、税金のために日本を捨てなければならない。このような国に未来はあるのだろうかと、平成29年度税制改正を読んで、つくづくと思った。

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