ある日、アシスタントの一人が、突然退職した。「直属の上司の自分に対する対応が不満」というのが理由だった。

このアシスタントと彼の上司の間にどのようなことがあったのかは、実際に見ていないのでわからない。どのみちこういう企業には、上司に不満があって
辞める人間はけっこう多くいたので、別に驚くことではなかった。が、少々意外だったのは、この行動に出たのが、アグレッシブで上になればなるほど変人度が
高くなる傾向がある投資銀行部の人間の中で、もっともディーセント(≒まっとうな)でありながら、アシスタントの中で最もできる新人であると、日本人ス
タッフたちが評価する人物だったことだ

あとから伝わってきた情報によると、彼の退職は完全な「突然」というわけではなかった。それよりも前に、彼は上司に対する不満を上層部に直訴してい
た。そこで、上層部と件の上司と彼との間で、協議が行われた。上層部は、彼の上司に改善すべき点があることを認め、改善のための猶予期間を設けることで、
全当事者はいったんの合意を見た。彼は、その協議の最後に「その期間内に上司の態度に改善が見られなければ、会社を辞める」と、言ったらしい。そして、そ
の最後の日である金曜日に、「満足のいく改善が見られなかったので、辞めます」と表明して、退職したのだった。

退職後、彼はすぐに、別の外資系の証券会社で働き始めた。最初に不満を直訴したときからすでに転職先が決まっていたか、あるいは転職することを念頭に置いて行動していたのだろう。

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