しかしこれは、ある種の怖ろしい罠であった。そうやってディレクターは、いつの間にかAに、自分の株を上げてもらうという借りを作ることになるのだった。また、タレントにそれを自分の手柄だと嘘をついたことで、Aとのあいだに共犯関係を取り結ぶことにもなった。
この「共犯関係」というやつが、何より強かった。それ以降、Aは、どれだけアドリブをくり広げようとも、このディレクターからは文句を言われなくなった。それは、相手の株もそれで上がるというWin-Winの関係を築けたからというのもあるけれども、それ以上に深く濃かったのは、ディレクターに一種の「賄賂」として手柄を譲るという共犯関係を取り結んだことにあった。

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